今回で３回目になりますこの対談、前回と同じメンバーの方にお集まりいただきました。
よろしくお願いいたします。
先日、信友さんのお父さんが初めてめぐみ園のショートステイをご利用されました。まずは小山さん、ショートステイの簡単な説明をお願いします。

ショートステイは、短期の宿泊利用ができる施設です。
ご家族の急用が出来た時や、ご家族の介護負担が大きくて何日間か休暇を取りたいという時に使われたり、ご利用者様自身も「少し休みたい」と言われた時や、あとは施設待ちで利用されることもありますね。

昔は、※老健や特養はなかなか入れなかったですよね。

はい。でも、今はそういうことはないですよね。
包括さんはどうですか、施設の空きって。

うちはショートステイから施設にというよりは、「今日の今日、どこかに入れませんか？」というような依頼が多いので。
ただ最近は、そんなに待機の人はいないように感じますね。ちょっと前までは、本当に３年位は待ってもらわないといけない時代があったんですけれど、そういうことも無くなってきてるのかなぁと。

施設が増えたんですか？

施設の種類や数が増えたというのもあるけど、分散したという表現の方がいいかもしれないですね。昔は老健・特養しか無かったのが、今はいろんな選択肢が増えたということで、待機する期間が短くなったのかもしれません。

ただショートステイは、本当に予約が取れないんです。めぐみ園でも緊急時はなかなか取りづらいので、他所の事業所さんに頼むこともあるんです。

すぐ埋まっちゃうってこと？やっぱり、めぐみ園が人気だからっていうのもあるんじゃない？持ち上げる訳じゃないけど、めぐみ園って人気よね、ほんと。

有難うございます（笑）

極端な話をすると、１泊２日だと何とか対応してもらえる。それが３泊、４泊と長くなると…。

同じ部屋が空いてないからね。

そう。途中の○日目が満床なので、〇日まででいいのであれば対応します、というような状況で…。

では信友さん、ショートステイを利用されていかがでしたか。

私の感想としては、もうとにかくプロの人がいてくれるのがすごく安心でしたね。父に異変があれば気がついてくれるし、排便管理までしてくださるっていうのがすごく有難かった。
それとお風呂ね。うちは浴槽が深いので、父が入るときはすごく心配なんですよ。こないだもお風呂から上がろうとした時に滑って湯船に落ちちゃって。幸い怪我がなかったから笑い話で済んだけど、怪我したら大変だから。そういう意味で、プロの人が入れてくれるのはすごく安心感がありました。

それは良かった。

あとね、ショートステイってレクリエーションがあまり無いって聞いてたんだけど、利用前に見学に行った時、体操やデイサービスみたいなプログラムが色々あって楽しそうだったんですよ。かかりつけの先生には「ショートに行ったら何もやる事が無いけんボケるよ〜」と言われてたけど、父も色んな事ができて楽しかったんじゃないかなと思います。

そういうイベントがあるのがいいよね。

でも、最初はすごく緊張されてましたよね。

みたいですね〜。けど、みんな優しくしてくれたし、「お父さん、お父さん」って結構人気者だったみたいよ。

じゃあ、もう次は抵抗無いですかね。

どうなんでしょうね〜、今は私の幼なじみが父の面倒を見てくれるようになったから。
ただ、彼女が来られない時はショートステイに行くしかないので、その時はよろしくお願いします。

デイサービスと比べたらショートステイはイベントが少ないので寂しいという方もいらっしゃるんですけど、うちは他の施設と比べたら多い方だと思いますね。デイサービスの流れを引き継いでいるっていうかね。
ショートを立ち上げた頃の主任が、「特養のショートに１ヶ月入所して退所する際、機能訓練の少なさから立てなくなってご自宅に帰る利用者さんを見て、散々悔しい思いをしてきた。だからめぐみ園では、ショートでも体操やリハビリなどを頑張ろう」という気持ちが根づいています。

そうですね。デイサービスとショートステイって目的が違うので。

デイサービスの後にお泊りできるデイサービスも全国にはありますが、実際には運営は難しいので数はとても少ないです。
あと、ショートステイは頻繁にイベントがあると、反対に疲れてしまう可能性もあるんですよ。ずっと泊まってますからね。

そうよね。職員さんも、デイサービスみたいなことを毎日しよったら大変よね。それこそ夜もあるのにね。

では次に、突然やってくる介護に対して、準備していたら良かったなと思う事は何かありますか？
これは全然違う話なんですけど、あるセミナーに行った時、阪神淡路大震災と東北の震災で２回、火事で家を失った人がいたんですよ。人生の最悪を２回味わったということで防災の番組があれば頻繁に呼ばれるくらい引っ張りだこらしいんですけど、その方に僕、「２回もそんな目に遭われて、何を準備してたら良かったと思いました？」って聞いてみたんですよ。そしたら「何も準備は出来ないけど、お風呂の水を全部抜かない、バッテリーを常に持っとく、ガソリンを常に全部使い切らないとか、そういう習慣づけからかな」って言われて。
介護も急に来ると思うんですが、あの時準備しておけばもっとスムーズだったなと思われる事はありますか。

私、母が認知症になった時、呉の近所の人ってほとんど馴染みが無かったんですよ、何十年も東京で暮らしてたから。だから、もうちょっと近所の人と仲良くしとけば良かったと思った。
両親が80歳を超えた頃からは、ご近所に「お願いします」の気持ちも込めて、お土産持って「帰って来たよ」って挨拶に行っとけば良かったなっていうのはすごく思いましたね。

「徳を積んでおく」じゃないけど、そういうことって絶対ありますよね。

高齢者の方は「子供に面倒を見てほしい、他人は絶対嫌だ」という方もおられて、そこにヘルパーが行っても「帰れ帰れ」という風になってしまうので、誰かにお世話になるという経験があったらすごく楽なんですよ。例えばご家族が入院して亡くなってお世話するのは他人しかいない、もう受けざるを得ないという究極の選択になった時にすごくストレスが掛かるので。ご近所さんや知り合いに「ちょっと見とって」とか、ご家族がお元気な時から介護のプロにちょっと入ってもらうというのが本人さんの準備としてあればね。
ショートステイにしても、最初は「嫌じゃ、何しに行かにゃいけんのんか」と親子喧嘩になってしまう方もいらっしゃるので、そういう経験や準備がすごく大事なんだろうなと。だから信友さんが幼なじみの方に見て頂くっていうのは、すごくいい事だなと思います。

私、母が認知症になるまでは、デイサービスやケアマネジャーという名称すらも意味が分からんかったんよ。でもいま講演してて思うのは、まだ介護が必要ない人でもデイサービスと言われて分かっている人が多いんですよ。どこで勉強するんだろうと思って。

本当ですよね。結構皆さん、よく知ってる！

いま、めぐみ園では「認知症予防カフェ」の事業の一環で「めぐみカフェ」という取組をしてるんですけど、最初は５人位だったのが、いま20人位来られる程の大盛況になってるんです。
自分が介護が必要になった時にどうしたらいいか、どこに相談したらいいかって不安だから、みんな何かを求めて来られるようになってきたんだろうなぁって思います。

そこは、認知症の人じゃなくても行けるん？

誰でも来られるし、認知症予防という目的でも大丈夫なんです。子供でも来られますよ。

月に１回やってるんですよね、今。めぐみ園は。

はい、月に１回ですね、今は。

今、そういう子供とお年寄りの接点ってほんとに無いじゃないですか。おじいちゃんやおばあちゃんにはお正月とお盆位しか会わないから、孫は「お年寄りはいつも元気なもんだ」と思ってるんだって。お年寄りは孫が来ると張り切るけんね。元気なお年寄りしか見てないけん、本当はお年寄りはすごく疲れやすくて大変なんだっていうのを、例えば私の映画で初めて知ったっていう若い人もおるんよね。だからそういう場って、本当に大事だと思う。

信友さんは東京に活動拠点があって遠方から上手に支援されていますけど、めぐみ園のご利用者さんの家族にも、同じように遠くから見守りながら支援・介護されている方がいます。そういう方に対して何かアドバイスがあればお願いします。

私、上手にしよるかどうかは分からんけど、両親に電話で「大丈夫なん？」と聞いても、いつも絶対「大丈夫」って言うんよね、実は大変な事になってても。
昔、母がバイクとぶつかりそうになって、避けた拍子に尻餅ついて怪我をしとった時があって。結局それは大事(おおごと)にならんかったけど、２人とも私に心配掛けんようにと思って隠しとったんよね。そういう、遠方の娘に心配掛けちゃいけんみたいな気持ちが働くから、親だけとしか繋がってないと知らんままになってしまうんです。
でもその後、介護サービスの人とLINEで繋がってからは、何も報告が来んうちは「大丈夫なんだな」って思えるようになりました。何かあったら絶対LINEで教えてくれるっていう安心感ができたのはすごく良かった。本当に家族、親以外のルートをどのくらい持っているかっていうのは大きいですね。それもプロの目を持っとる人が一番いいっていうのをすごく実感しました。で、今は幼稚園から一緒だった同い年の幼なじみがキーマン。

幼稚園からっ！？

そう。すごくラッキーだなと思うのは、彼女は去年だったらまだ広島市に通勤してたから、いくら仲が良くても頼めんかったけど、もう退職したから大丈夫になって。父も幼稚園の頃から知ってるから「おお、来たんか」っていう感じだし、彼女も両親を看取っとるから介護も私より上手いし、それこそ父がちょっとお漏らしとかした時も私より的確な対処をしてくれる。
でも、この話を東京の人にしたら、「それはファンタジーだよ」って言われた。話が出来過ぎとるって。東京にはそんなご近所関係ってなかなか無いからね。だからそういう頼れる人や場所がいくつあるかっていうのが、すごく大切だと思います。

本当に何かあった時はすぐに連絡をさせてもらうようにしています。ただ、信友さんの場合は「おかしいよ」って伝えたら「そうよね」って分かってくれるけど、離れているとなかなかそれを認められないご家族もいて、「電話したら大丈夫って言うけ、大丈夫よ」って反対に言われるんです。「いやいや、私らから見たら大丈夫じゃないよ」って言っても、「いや、大丈夫だから」って言葉が返って来るので…。

「本人が大丈夫って言いよるけ」って。

「いや、大変です」って危機感を伝えたり、何かある時は必ず「こういうことがありましたよ」と連絡を取るようにはしています。

何も連絡が無いときは、大丈夫なんだって思うしね。

ケアマネジャーは１ヶ月に１回※モニタリングというのがあるので、遠方に住まわれているご家族には、その時に必ず「いま、お母様はこんな状態ですよ」という連絡をして安心してもらうようにしてますね。

宮下さんは、いかがですか？

皆さんおっしゃったけど、「大丈夫」っていうのは、僕も親なんで親子両方の気持ちが分かるんですよね。やっぱり子供には心配掛けたくないし、親が子供たちの手を煩わしたらいけんと思って「大丈夫」というのも親心、親としての気遣いなんだろうなって。
でも、「食事もまともに食べてないんですよ」って言うと「え、そうなんですか？」という反応を示すご家族と、「いや、声の調子も全然変わらないから大丈夫でしょう」みたいな反応と、すごくきれいに分かれるんですよ。それ以上言ったら「じゃ、帰れってことですか？」って感じになるので、僕らもあんまり強く言えない。最近は、ウェブカメラを取り付けられる方もいらっしゃいます。

でも、あれが一番客観的に様子が分かるし。実際、お風呂で亡くなられた方がおられたんだけれども、この時間から本人の姿が見えないからその前に逝ったんだろうという大体の時間が分かったんですよ。もう20年近く前の話で、当時としては結構最先端でした。ご家族が情報通信に明るい方だったんで出来たんですが、今後はそういう風になって来るのかなぁという感じはします。
携帯電話の電源を入れっ放しにして、ウェブカメラ代わりに利用することも出来ます。Wi-Fiで遠方からでも見られて便利ですから、そういう工夫をされている方もいらっしゃいます。
そういった「介護の準備」っていう意味では、高齢者の方もカメラの存在、カメラを向けられることに慣れることも必要なんかなぁと思いますね。

そうですね。